2017年のベスト本?電子出版の可能性を強く感じた1冊ーー『多動日記』

年末に「今年読んだ本のベストは?」と聞かれたら、おそらく高城剛氏の『多動日記』と答えるだろう。この本はヤバイ。面白すぎる。似たような題名で、ホリエモンの『多動力』が一世風靡したが、内容の密度や興味深さは比べ物にならない(ホリエモンの本も面白かったけどね)と思う。題名からして差別的だということで、紙の出版ができず、電子出版となったらしい。そのおかげで、ありがたいことにKindle Unlimitedで無料で読むことができる。読むと確かに「商業出版は難しいだろうな」という内容がバンバン書かれている。しかし、こういう情報にアクセスできることがとてもありがたいし、読後は視野がぐんと広がって、自分の知っている世界の異なる側面を見ることができた。

高城氏は、物を捨て、定住することも捨て、世界の南の島を全て訪れると宣言し、実行している。いつも世界中を旅している”ハイパーメディアクリエイター”だ。女優沢◯エリカさんの元配偶者というだけではない。個人的には、そのとんがった生き方に共感しまくりである。氏の脳を通って吐き出される情報は、普通に見えている世の中を裏側を教えてくれる。同じものを見ていても、あっという間に目の前のものの理解がひっくり返ることがある。そんなわけで、これまでも著作やブログなどを通して大きな影響を受けてきたが、氏のコンテンツの中でも『多動日記』はベストではないか?と思う。

『多動日記』では、世界中を移動する生活でしかわからない感覚や、現地へ行かなければわからない知見、それも、なんとなく旅行しているだけではわからない世界を見せてくれる。行動が伴っている(本当に現地で過ごしている)ので、文章を通して五感に訴えてくる力強さがあり、本を読むだけで旅をした気分を味わえる。そして、じっとしていられなくなる(笑)。氏はまさに「移動距離とアイデアは比例する」を体現している。世界中の移動を繰り返す稀有な生活をしている人でなければ、この本で書かれたアイデアは出てこないだろう。エッセイとも日記とも物語ともとれる表現力で、訪れた世界各地の地名の順に、現地で馳せた思いについて書かれている。現実か非現実かわからなくなる不思議な感覚を味わえ、内容は世界と未来への示唆に富んでいる。読めば世界に繋がるワクワク感を肌で感じることができる。世界からみた現在の日本が見える。とにかくぶっ飛びたい方にはオススメの書籍。いま、理解していると思っている現実が、根底から覆され、視野が高く広くなるだろう。

読後、このような素晴らしい本が、電子書籍でしか読めないという事実に、今後の本のあり方を考えさせられた。商業出版にかかるバイアスをリアルに感じてしまったのだ。TVや新聞までではなくとも、資本主義の世界では、こういったバイアスが出版にもかかってしまうのは、考えてみると当たり前である。これまで、電子出版は「商業出版ほど内容が練れていない」「厳しいチェックを通ってないのでレベルが低い」というイメージがあり、確かにその通りだったと思う。しかし、『多動日記』のような本が出現してしまった以上、一握りの電子出版は、商業出版をはるかに超越するということを受け入れなければならない。これから出版業界は大変な時期を迎えると思うけれど、読者にとっては、このような作品がたくさん読めるようになるのは、とてもありがたい。『多動日記』の続編が待ち遠しくてしかたない。

この記事を書いた人

tomoko3

現代のエビデンス社会では認められていない本物の「自然の理」を実践中。
それは、水や光に学ぶことであり、なんにでも応用できる。
室内水光栽培士/結界士