「LIFE SHIFT」価値観が変化する時代の羅針盤

「WORK SHIFT」に続き、リンダ・グラットンの著作は、やはり素晴らしかった。

ダニエル・ピンクと並び、リンダ・グラットンの著書は、未来をあらかじめ知るのに役に立つ。今回の著作も新しいビジョンを見事に言語化していた。

超高齢化社会に突入する日本人にとって、読んでおくべき1冊と言える。「WORK SHIFT」はその名の通り、働き方について書かれているが、「LIFE SHIFT」は人生そのものの生き方に言及している。おそらく、ここに書かれていることに「関係ない」と言える人はほぼ皆無と思う。100年生きることを前提に、お金、仕事、時間、人間関係に至るまで、今までの概念を変えて、一人一人が生き方を見直した方がいいだろう。特に、30代半ば以降の人達にとっては、生まれ育った時代の価値観と、自分たちが迎える未来は完全に異なるということを意識して、場合によっては根底から生き方を変える必要がある。

人生100年時代に突入すれば、過去の生き方とも言える「教育→仕事→引退」というこれまでの道筋は通用しない。誰もが新しい「マルチステージ」の生き方が必要で、ステージチェンジを何度も繰り返すことになる。この感覚は、男性より女性の方がイメージしやすいかもしれない。結婚や出産、転勤、介護、家族の都合でステージチェンジせざるを得ない状況にあった場合が多いからだ。まさに私もステージチェンジすることを考えさせられ、ある程度実行してきたので、この考え方はすんなりと入ってきた。もちろん、企業に終身雇用されながら突き進んでいるサラリーマンも、役職定年等が増加した今、こういう意識は誰もが持っているかもしれない。

100年生きるとなると、まず考えるのが、健康とお金だ。誰もが、健康に活動できる期間を伸ばし、仕事をしてお金を稼ぐ必要がある。そして、無形資産の蓄積。これらを意識して、今のうちから準備が必要だ。書籍の中に、新しい生き方のシナリオとして、3つの例が具体例として示されているので、自分に当てはめて、イメージしてみるといいと思う。すでに、この新しいシナリオで生きている人も少なからずいるだろうが、その場合は、見落としがないか、もう一度振り返るのに役立つ。

この本には、一人の人生という視点で書かれているが、ここに、夫婦という単位で新しいシナリオを作ってみることを提案したい。我が家では、どちらかというと、夫は旧来の生き方を貫いており、私が新しいシナリオで生きている。まだまだ十分うまく回っているわけではないが、リスクヘッジと急激な時代の変化に対応するための、自分たちなりの適応方法である。今は、時代の境目なので、新旧の価値観が混ざり合っている。旧来の生き方でうまくいっている夫を今すぐにステージチェンジさせる必要もないし、とはいえ、旧来の生き方が完全に行き詰まる時が必ず来る。その時、私が新しいステージを満喫できていたら、夫婦で共有できると考えている。健康などは個人的なことだが、ある程度のリソースや経験を夫婦で分かち合えるのではないだろうか。

高齢化社会というと、ネガティブな捉え方が多い中、本書はかなりポジティブなビジョンを掲げている。今の時代を生きている我々にしかできない新しい概念とビジョンを生み出すことは、きっと、とてもワクワクすることで、もっと楽しんで取り組むことなのだと思わせてくれた本だ。

この記事を書いた人

tomoko3

現代のエビデンス社会では認められていない本物の「自然の理」を実践中。
それは、水や光に学ぶことであり、なんにでも応用できる。
室内水光栽培士/結界士